突然ですが(本当に突然)
「松上の鶴」っていう構図の絵、
きっとドコかで見た事がありますよね?
掛け軸とか屏風とか…何とか鑑定団によく出るやつとか…

実物はこんなアホっぽい鶴じゃないと思うけれども
ココに描かれているツルは
ほとんどが「タンチョウ」と言う種類のツル。
松とタンチョウはとてもおめでたい組み合わせとして
昔から色々な絵のモチーフとして使われてきました。
松は常緑樹(1年中葉が緑)なので「不老長寿」の象徴。
鶴は「鶴は千年、亀は万年」というように「長寿」の象徴だったり、
鶴の夫婦が仲良しな事から「夫婦鶴(めおとづる)」と呼ばれ、
結婚式などおめでたい席にピッタリ!
…と、松と鶴はダブルでおめでたい象徴なのです。
ただし…

…という願いはたぶん一生叶いません。
試しにGoogle検索とかしてみてください。
松にとまってるタンチョウの写真なんてどこにもない!
それもそのハズ。
実はタンチョウは松の枝にとまることができません。
とまれないんだから写真もない。
北海道に行っても見られない。
昔からたくさん「松上の鶴」が描かれている事は確かですが、
実際にはありえない組み合わせという事になります。
一体どういう事なんでしょうか??
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「松上の鶴」なのに、ツルは松にとまれない!?
確かに「松上の鶴」として描かれてるのは
間違いなくタンチョウというツルの仲間。
でも、タンチョウさんに聞いてみたところ、
どうやら人違いならぬ「トリ違い」だそうですよ。
その理由をすこぶる簡単に言うと、
松にツルがとまってるのはオカシイ事だからです。
理由①:ツルは松にとまれない

そもそもツルって、木の枝にとまれないんだよねー…。
厳密には木の枝にとまれるツルもいるといえばいますが、
それはアフリカのサバンナに住んでいる
「カンムリヅル」と「ホオジロカンムリヅル」の2種類だけ。
どちらも日本には住んでいませんし、
そもそもタンチョウとは全然似ていません。
ツルが木の枝にとまれない理由は足のカタチにあります。

イラストを見てもらえればわかりますが(わかってほしい)、
後ろ向きの1本の指がとても短いですね。
これでは、木の枝をしっかりつかむ事ができません。
もし枝に乗れたとしても、
ツルっとすべって落ちてしまうでしょう。
…ツルだけに。
…とにかく、
タンチョウの足は木にとまれるように出来てないんです。
理由②:そもそもとまる必要がない

それに、僕たち基本ずーっと地面にいるから
木にとまりたいなーなんて思った事もないよ
タンチョウの生活に松のような高い木はほとんど必要ありません。
- 水辺で魚やカエルなどのゴハンを食べて、
- 地面の上で片足になって寝て、
- プロポーズのダンスも地面で踊るし、
- ヒナのための巣だって地上に作ります。
つまり、木にとまる機会が全くない!
鶴と松はベストコンビどころか、
お互いに顔さえ覚えてないようなうっすい関係かもしれない…?

本当は「松上の鸛(コウノトリ)」だった!
…という訳で「松上の鶴」は
実際にはあり得ないシーンだという事が判明してしまいました。
なんてココまでめちゃくちゃに言っといてナンですが、
「松上の鶴」は決してウソとか妄想とかではありません。
確かに松にとまる鳥がいたんです。
それが、コウノトリ。
「松上の鶴」は、ツルとコウノトリを見間違えて描かれたもの
という説が今のところイチバン有力なんですよ。
タンチョウとコウノトリはそっくりさん

コウノトリさんとタンチョウさん。
イラストがちょっとアレなんで想像力は必要ですが、
「黒・白・赤」というカラーリングがどことなく似てるし、
体の形もなんとなく似てますよね。
よーく見ればちゃんと見分けはつきますが、
高い松の上にとまっていたら細かい部分は見えないし、
見間違えてもおかしくないかもしれません。
コウノトリなら松にとまれる
タンチョウは木にとまれないと言いましたが、
コウノトリは木の枝にもバッチリとまれます。

なんかめちゃくちゃマジメに鳥の足描いてる
タンチョウと違って、
後ろ向きの1本の指が長いので、
枝をしっかり掴めるようになっています。
ツルではないのでツルッとすべる事はありません。(スベッてますよ)
それに、コウノトリは松の木のてっぺんに巣を作ってたらしい!
これは「松上のコウノトリ」が実在した紛れもない証拠ですなあ。
今は本物のコウノトリを見る機会はあまりありませんが、
コウノトリはもともと日本の広い地域にいて
昔の人にとっては結構身近な鳥だったようです。
だからこそ、ツルと見間違える事がかなり多かったとか。
現在は日本の野生のコウノトリは絶滅してしまいましたが、
人工繁殖などで少しずつ数が増えてきています。

いつか本物の「松上のコウノトリ」、見てみたい~!
でも、やっぱり松と鶴はベストコンビだよね。
…という事で「松上の鶴」は、
タンチョウとコウノトリを見間違えた説がとっても濃厚。
松にとまる鶴は実際にはいませんが、
だからこそ想像上の生き物みたいで神秘的!
カッコいいベストコンビに違いはありませんね。
他には、
- 単純に「鶴と松」っていうおめでたい生き物を一緒に描いただけ
- 「サギが木にとまれるならツルもとまれるハズ」と勝手に想像して描いた
なんていう説もあります。
が、見間違えの方がオモシロイので絶対見間違えです。
松と鶴とかめちゃカッコイイ!!
せっかくだから絵だけじゃなくて
ホンモノの「松上の鶴」が見てみたいよねー。