突然ですが(本当に突然)
「松の枝にとまる鶴」みたいな構図の絵、
皆さんきっとドコかで見た事がありますよね?
掛け軸とか屏風とか…
ありがたそうな巻物とか…
![ありがたい巻物(?) | トリまみれイラスト](https://kotori-pastry.com/wp-content/uploads/2019/03/Illust_032-03.png)
▲実物はこんなアホっぽい鶴じゃないと思うけれども
そんな構図の絵に描かれているツルは
ほとんどが「タンチョウ」という種類のツル。
松とタンチョウはとてもおめでたい組み合わせとして
昔から色々な絵のモチーフとして使われてきました。
松は常緑樹(1年中葉が緑)なので「不老長寿」の象徴。
鶴は「鶴は千年、亀は万年」というように「長寿」の象徴だったり、
鶴の夫婦が仲良しな事から「夫婦鶴(めおとづる)」と呼ばれ、
結婚式などおめでたい席にピッタリ!
…と、松と鶴はダブルでおめでたい象徴なのです。
ただし。
![](https://kotori-pastry.com/wp-content/uploads/2019/05/QueIcon_04-03.png)
…という願いはたぶん一生叶いません。
試しにGoogle検索とかしてみてください。
松の枝にとまってるタンチョウの写真なんてどこにもない!
それもそのハズ。
実はタンチョウは松の枝にとまることができないんです。
とまれないんだから写真もない。
北海道に行っても見られない。
昔からたくさん「松の枝にとまる鶴」が描かれているのに、
実際にはありえない風景という事になります。
一体どういう事なんでしょうか??
ページコンテンツ
「松の枝にとまる鶴」なのに、ツルは松にとまれない!?
「松の枝にとまる鶴」として描かれているのは、
その姿をよーく見ても
間違いなくタンチョウというツルの仲間。
でも、タンチョウさんに聞いてみたところ、
どうやら人違いならぬ「トリ違い」だそう。
その理由をすこぶる簡単に言うと、
松にツルがとまっているのはオカシイ事だからです。
理由①:ツルは松にとまれない
![](https://kotori-pastry.com/wp-content/uploads/2020/04/Icon_039-03.png)
そもそも、ツルって木の枝にとまれないんだよねー。
厳密には木の枝にとまれるツルもいるといえばいますが、
それはアフリカのサバンナに住んでいる
「カンムリヅル」と「ホオジロカンムリヅル」の2種類だけ。
どちらも日本には住んでいませんし、
そもそもタンチョウとは全然似ていません。
ツルが木の枝にとまれない理由は足のカタチにあります。
![タンチョウさんのあし | トリまみれイラスト](https://kotori-pastry.com/wp-content/uploads/2019/03/Illust_033-03.png)
↑のイラストを見てもらえればわかりますが、
後ろ向きの1本の指がとても短いですね。
これでは、木の枝をつかむ事ができません。
もし枝に乗れたとしても、
ツルっとすべって落ちてしまうでしょう。
…ツルだけに(?)。
…とにかく、
タンチョウの足は木にとまれるように出来てないんです。
理由②:そもそもとまる必要がない
![](https://kotori-pastry.com/wp-content/uploads/2020/04/Icon_039-03.png)
それに、僕たち基本ずーっと地面にいるから
木にとまりたいなんて思った事もないよ。
タンチョウの生活に松のような高い木はほとんど必要ありません。
- 水辺で魚やカエルなどのゴハンを食べて、
- 地面の上で片足になって寝て、
- プロポーズのダンスも地面で踊るし、
- ヒナのための巣だって地上に作ります。
つまり、木にとまる機会が全くない!
鶴と松はおめでた~いベストコンビのようですが、
実はお互いに名前が思い出せないくらい
うす~い関係かもしれない…?
![タンチョウさんと松さんの絶妙な関係 | トリまみれイラスト](https://kotori-pastry.com/wp-content/uploads/2019/03/Illust_035-03.png)
本当は「松の枝にとまる鸛(コウノトリ)」だった!
…という訳で「松の枝にとまる鶴」は
実際にはあり得ないシーンだという事が判明してしまいました。
ありがた~い巻物の作者の方々は
ちゃんとタンチョウさんを見て描いたのかなあ?
自分の想像で描いちゃったのかなあ?
なんてめちゃくちゃ失礼な疑問が脳裏をよぎりますが、
「松上の鶴」は決してウソとか妄想とかではありません。
確かに松にとまる鳥がいたんです。
それが、コウノトリ。
「松上の鶴」は、ツルとコウノトリを見間違えて描かれたもの
という説が今のところイチバン有力なんですよ。
タンチョウさんとコウノトリさんはそっくりさん
![コウノトリさんとタンチョウさん | トリまみれイラスト](https://kotori-pastry.com/wp-content/uploads/2019/03/Illust_036-03.png)
▲コウノトリさんとタンチョウさん。
コウノトリさんとタンチョウさんに並んでもらいました。
「黒・白・赤」というカラーリングがどことなく似てるし、
クチバシや首、足が長い体型もなんとなく似てますよね。
モチロンよーく見ればちゃんと見分けはつきますが、
高い松の上にとまっていたら細かい部分は見えないし、
見間違えてもおかしくないかもしれません。
コウノトリなら松にとまれる
タンチョウさんは木にとまれないと言いましたが、
コウノトリさんは木の枝にもバッチリとまれます。
![タンチョウさんとコウノトリさんの足比較 | トリまみれイラスト](https://kotori-pastry.com/wp-content/uploads/2019/03/Illust_034-03.png)
なんかめちゃくちゃマジメに鳥の足描いてる
コウノトリさんはタンチョウさんと違って
後ろ向きの1本の指が長いので、
前の指と後ろの指で木の枝を挟むことができます。
ツルではないのでツルッとすべる事はありません(スベッてますよ)
コウノトリさんの指はしっかりとして丈夫そうですが、
意外と掴む力(握力)は弱いらしく、
木にとまる時には枝をしっかり掴むのではなくて
枝の上に乗ってバランスを取っているんだって。
後ろ向きの指が長いおかげで
前にツルッと滑らず上手にバランスが取れるんですね!
![](https://kotori-pastry.com/wp-content/uploads/2019/05/QueIcon_04-03.png)
コウノトリ専門家の方から情報をご提供いただきました。
ありがとうございますm(_ _)m
それに、
コウノトリは実際に松の木のてっぺんに巣を作ってたらしい!
これは「松の枝にとまるコウノトリ」が実在した
紛れもない証拠ですなあ。
今は本物のコウノトリを見る機会はあまりありませんが、
コウノトリはもともと日本の広い地域にいて
昔の人にとっては結構身近な鳥だったようです。
だからこそ、ツルと見間違える事がかなり多かったとか。
現在は日本の野生のコウノトリは絶滅してしまいましたが、
人工繁殖などで少しずつ数が増えてきています。
![](https://kotori-pastry.com/wp-content/uploads/2019/05/QueIcon_04-03.png)
いつか本物の「松の枝にとまるコウノトリ」、
見てみたい~!
でも、やっぱり松と鶴はベストコンビだよね。
…という事で「松の枝にとまる鶴」は、
タンチョウさんとコウノトリさんを見間違えた説がとっても濃厚。
松にとまる鶴は実際にはいませんが、
だからこそ想像上の生き物みたいで神秘的!
実在するかどうかなんて野暮なことは置いといて、
カッコいいベストコンビに違いはありませんね。
ちなみに、他にも
- 単純に「鶴と松」っていうおめでたい生き物を一緒に描いただけ
- 「サギが木にとまれるならツルもとまれるハズ」と勝手に想像して描いた
なんていう説もあります。
が、見間違えの方がオモシロイので絶対見間違えです。
せっかくだから絵だけじゃなくて
ホンモノの「松の枝にとまる鶴」が見てみたいよねー。